ID:Roniaの記録

『世界桜』のものがたり~其ノ壱

みどりゆたかなには、一本いっぽんさくらった。

それはどんなさくらよりもおおきく、そして太古たいこよりながきていた。

かつての人間にんげんたちは、それを『世界桜せかいざくら』と名付なづけ、まるで神木しんぼくようあがはじめた。

高潔こうけつ人間にんげんたち信仰しんこううちに、何時いつしかさくら自我じがようになった。


さくら人間にんげんたち大好だいすきだった。

あめったら、えだ目一杯めいっぱいばして雨宿あまやどりの場所ばしょこしらえた。

なかいたものには、栄養えいようたっぷりのさくらんぼをけてあげた。

そのたびに、うれしそうに此方こちら見上みあげる人間にんげんたち大好だいすきだった。


しかし、さくら理解りかいしていなかった。

ときだ、よしかった。

人間にんげんとは世代せだいかさねるイキモノである、ということを。

そして子孫しそんまで、かならずしも高潔こうけつであるとはかぎらない、ということを。