ID:Roniaの記録
『世界桜』のものがたり~其ノ陸
――やがて、幾多の年月が流れた。
嘗て緑豊かだった地は、すっかり荒れ果てた。
絶望だけが、其処に在った。
桜の樹だった切り株は、そんな絶望の中に沈んでいた。
自我は、消滅していなかった。
自我は、未だ残っていた。
長い、永い絶望の中で、切り株は悟った。
人間は此処迄堕ちてしまったか。
嘗ては共に生きていた事等、すっかり忘れてしまったか。
黒い、黒い感情に支配されていく。
最早大好きだった頃の、高潔な人間達は死んだ。
今此の世に蔓延って居るのは、己の利益しか考えぬ、畜生に成り下がった人間共。
英傑等と囃し立てて極限迄使い潰し、
勝手に噂を立てて次々と死体遺棄し、
苛立ちの捌け口として無垢な少女の将来を奪い、
勝手に立てた噂を勝手に悪しき方向へと歪めていき、
挙句の果てには大き過ぎて邪魔だからと切り倒し、
太古より存在した樹身を、別の品種と騙って安価で売り払う等、
なんと、
なんと、
なんと愚かしい事か!!
真っ黒な激情に満たされた瞬間だった。
十四の英傑と一人の少女、そして『世界桜』自身、全ての魂と未練が混ざり合い――
やがて『ソレ』は、十六の怨念が複雑に絡まった『祟り』に変貌したのである。
嘗て緑豊かだった地は、すっかり荒れ果てた。
絶望だけが、其処に在った。
桜の樹だった切り株は、そんな絶望の中に沈んでいた。
自我は、消滅していなかった。
自我は、未だ残っていた。
長い、永い絶望の中で、切り株は悟った。
人間は此処迄堕ちてしまったか。
嘗ては共に生きていた事等、すっかり忘れてしまったか。
黒い、黒い感情に支配されていく。
最早大好きだった頃の、高潔な人間達は死んだ。
今此の世に蔓延って居るのは、己の利益しか考えぬ、畜生に成り下がった人間共。
英傑等と囃し立てて極限迄使い潰し、
勝手に噂を立てて次々と死体遺棄し、
苛立ちの捌け口として無垢な少女の将来を奪い、
勝手に立てた噂を勝手に悪しき方向へと歪めていき、
挙句の果てには大き過ぎて邪魔だからと切り倒し、
太古より存在した樹身を、別の品種と騙って安価で売り払う等、
なんと、
なんと、
なんと愚かしい事か!!
真っ黒な激情に満たされた瞬間だった。
十四の英傑と一人の少女、そして『世界桜』自身、全ての魂と未練が混ざり合い――
やがて『ソレ』は、十六の怨念が複雑に絡まった『祟り』に変貌したのである。