フラウィウスの保存魔術。
制約があるとはいえ、命にかかわる負傷ですら無かったことにする技術は恐ろしくすらある。

(……まあ、これがなかったら。こんな闘い三昧な場所に長居する気なんて起きなかったな)

　巻き戻す。砂の器を逆さまに。流れ落ちたはずの時の砂が、元に戻る。
自己再生能力の活性化通常の治癒術による方法では、生命力の殆どを失っている己の傷を治すことは難しい。
　そんな自身が抱える問題を、一時的でも解決する術が。この地にあった。

　成長は既に望めなく。ただ日々を生きるだけで手一杯な身体。
前借りするだけの寿命自己治癒のためのちからも、もう残されていない。大きな怪我や病気をすれば、それまで。
　別段、足掻くつもりはないし。ずっとここに居るつもりもない。
終わりは遅かれ早かれ、万物に等しくやってくるものだから。――けれど。このまま、離れ離れでいるのは、


(…………。)


星空の下。溜息に溶けた感情は、密やかに。