ID:lavarocheの記録
[黒い髪の男が端末を操作している。そこへ、白衣の男が近づく]
白衣の男:今日は何の記録を読んでいるんだい。
黒髪の男:終末期のものです。人類絶滅のきっかけになった事象について、何か新しい情報を見つけられないかと思って。
[白衣の男が、端末を操作している男の隣の席に座る]
白衣の男:西ピレネーで発生した『泥水噴出現象』のことだね。
黒髪の男:読めば読むほど、分からなくなります。帯水層に高い圧力を加えるようなものは、ピレネー造山帯にはないはずです。それが、両麓をまるまる飲み込むほどの泥水を?
白衣の男:しかも、その泥水からあらゆる病が広がったと言われているね。
黒髪の男:浅い地層に封じられていたウィルスや細菌が、一緒に噴出したと仮定しても……果たしてそれが、人間を含めた生命の多くを滅亡にまで追いやる規模になるでしょうか。
白衣の男:そうだね。実に不思議だ。人類に限って言えば、この時代彼らは栄えに栄えて、死さえも乗り越えんとする勢いだったからね。古代の未知の病が蔓延したとしても、十分に対処できるはずだ。私たちは免疫が低いから難しそうだけど。
[黒髪の男が考え込むような仕草をする。白衣の男が笑う]
白衣の男:熱心な君に、面白い話をしてあげよう。
黒髪の男:なんでしょう?
白衣の男:西ピレネーの山麓地帯に、ある古い神の伝承があるんだ。妊産婦の守護神であり、嬰児に祝福を与える、というね。
黒髪の男:神……ですか。
白衣の男:当時はキリスト教が信仰されていたから、その神は遠い過去の伝承として扱われていた。だからなのか、現地の言葉で『古きもの』と呼ばれていてね……面白いのはここからだ。その神は、『世の穢れを集めた泥』を起源としていたらしいんだ――
映像記録#cL8twF691tQAaKg8
[黒い髪の男が端末を操作している。そこへ、白衣の男が近づく]
白衣の男:今日は何の記録を読んでいるんだい。
黒髪の男:終末期のものです。人類絶滅のきっかけになった事象について、何か新しい情報を見つけられないかと思って。
[白衣の男が、端末を操作している男の隣の席に座る]
白衣の男:西ピレネーで発生した『泥水噴出現象』のことだね。
黒髪の男:読めば読むほど、分からなくなります。帯水層に高い圧力を加えるようなものは、ピレネー造山帯にはないはずです。それが、両麓をまるまる飲み込むほどの泥水を?
白衣の男:しかも、その泥水からあらゆる病が広がったと言われているね。
黒髪の男:浅い地層に封じられていたウィルスや細菌が、一緒に噴出したと仮定しても……果たしてそれが、人間を含めた生命の多くを滅亡にまで追いやる規模になるでしょうか。
白衣の男:そうだね。実に不思議だ。人類に限って言えば、この時代彼らは栄えに栄えて、死さえも乗り越えんとする勢いだったからね。古代の未知の病が蔓延したとしても、十分に対処できるはずだ。私たちは免疫が低いから難しそうだけど。
[黒髪の男が考え込むような仕草をする。白衣の男が笑う]
白衣の男:熱心な君に、面白い話をしてあげよう。
黒髪の男:なんでしょう?
白衣の男:西ピレネーの山麓地帯に、ある古い神の伝承があるんだ。妊産婦の守護神であり、嬰児に祝福を与える、というね。
黒髪の男:神……ですか。
白衣の男:当時はキリスト教が信仰されていたから、その神は遠い過去の伝承として扱われていた。だからなのか、現地の言葉で『古きもの』と呼ばれていてね……面白いのはここからだ。その神は、『世の穢れを集めた泥』を起源としていたらしいんだ――