🏝️怠惰な人間でも未練は残るらしい
「ね、兄さん。どうやったら異世界って行けると思う?」
「あ、五体満足で行きたいから
トラックの交通事故とか以外で、なんだけど〜」
「……」
「……うづき、お前の未来には大きな希望がある。だから早まるのは」
「いや違うよ!?
現実が嫌になったとかそういう話ではなくて!」
「一期一会ってさ、一会で足りると思う?」
「一会で……一回の出会いだけで満足できるか、という意味か?」
「うん。あ、そもそもこの言葉が、
数少ない出会いを大切にしよ〜って
意味なのはわかってるよ」
「それを踏まえた上で、けど足りなくない?
という話がしたくて」
「……ふむ、確かに一会というのは僅かなひと時ではあるな」
「その僅かな時間だからこそ大切に過ごそうという意識は芽生えるとは思うが、
それでも、やはり次がない恋しさというものは募るものだろう」
「……うづきとの出会いが一会だったら、確かに寂しいだろうな」
「え?そこで出てくるのが僕なの?
……や、まあ、欲しい答えはもらえたわけだけど!」
「まあ、流石の兄さんも寂しい気持ちはあるよね。
僕だってそうだよ。一会じゃ全然物足んないんだ。
「どうにかしてニ会か……
数飛ばして百会くらいにはしたいんだけど」
「けどみんなとはそう簡単に会えるわけじゃないし……」
「……」
「もしや、それは先程の質問の意図に当たる言葉だろうか」
「ん……まあ、そうかな〜」
「……ぶっちゃけると、また無人島の人たちと会えないかな、って思ったんだ」
「また会おうね、って約束したはいいけど。
あんな変な状況で会った人達だから、次はどうすればいいのかわかんなくて。
それこそ、異世界とかに行けたら会えたりして……って思って」
「ふむ……それはまた難しい話だな」
「だよね〜。僕もそう思うよ。ほんと〜に手詰まりだもん」
「……まあかといって、諦める気もないけど」
「……」
「どうしたの?」
「いや……うづきにしては珍しい言葉だと思ったんだ」
「そんなに変だった?」
「そのような意味ではない。断じて」
「……ただ、お前がそれだけ思える経験ができたことが、
良いことだと思っただけだよ」
「……」
「それは……案外そうかも、ね」