🏝️思い出のかけらを巣に持ち帰っては
「ねえ、つーちゃん。
やっぱり、家に一冊はあったほうがいいかな……」
「サバイバルガイドブック……!」
「……そは、」
「げに難解なる審判の問いかな……」
「……如何でかさること思わん?」
「ん、えっとね。やっぱりまた……
遭難するかもしれないって思ったんだ。無人島に」
「ほら、海とか行った時に、
大きな波がわーっと来るかもって……!」
「さる特異なることや顕現すや……?」
「……でも私達、どっちも遭難したことあるんだよ?」
「そは不変たるまことの事象なれど……」
「それに、つーちゃんも私も、普通じゃない状況で
いきなり知らない島にいたんだ」
「きっと次は……
家の扉を開けた先に無人島が……!」
「さることこそ起こらまほしからね!」
「……あ、けど……」
「……なれど、さらでも……
一冊ほどは我が棲家にあふべかりもこそ。
其の孤高の地から生還せん為の術を記しき書物も」
「えっ、本当にいいの?」
「うむ、我も思案しけり」
「げに遭難さる……かは胡散なるところなれど……
されど、その本があらばさだめて……
島の出来事を思ひ出すべしや?」
「我は、その書物があらば……
遭難せるしだのこと、ゆゆしかりしこと、心満たすこと……」
「さらには、もろともにふりしわたり者たちと、
召しき甘美なりける馳走も、
けざやかに思ひ出づるる。ちはやもさらずや?」
「……」
「……うん。つーちゃんの言う通り、
この本を見てると、前の遭難した時のことが思い出せるんだ」
「こういうこと実際にやったなあ、って。
前はあの人たちと一緒にやったんだよなあ……って」
「お土産を見てもそうは思うんだけどね。
けどなんだか、この本が目に留まっちゃったのと」
「……次会った時、この本を……
みんなで見て懐かしいね、って言いたくて」
「………」
「さりかし。また再会しほどの……
良き物語の種にならむ、さだめて」
「……買はむや、その書物。
其の代は我こそいださめ」
「! うん!ありがとう、つーちゃん!」
「ねえ、帰ったらつーちゃんも一緒に読もうよ!
きっとつーちゃんも懐かしいな、ってなると思うんだ……!」
「……うむ、更にも言わずかな!」