ID:884teikiの記録

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家族から見たあたしはかわいそうな子だった。

だいたい9割くらいは何かしらの『力』を持って生まれる中、ハズレですらない、くじを引けなかった何一つ手の中に無い子ども。それがあたしだったから。
家族だけじゃない。周りの大人もみんなあたしにかわいそうだとレッテルを貼った。

それでもあたしは全然かわいそうじゃない。
汚い人間と群れて生きるなら孤独な方がずっと楽。
娯楽に浸かれる暮らしがあれば十分。
――そう自分に言い聞かせてなきゃ。とっくに狂っているような人生だった。振り返れば、いつだってそう思う。

けれど、そんな人生でも。
家族間の愛情をもらえなかったわけじゃない。わかってる。
ゲームもラノベもお小遣いで買ったやつだし。

『――これで、きっと。幸せになれるのよ。不幸ばっかりだったあなたのことは絶対神様が見てくれてる』
『――良かったね、シュテファニエ。なんだかお姉ちゃんはちょっと寂しい気もするけど』

でも理解まではもらえなくて。
家族と居る部屋は水の満ちた水槽みたいに息苦しくて。


きっと、あたしに本当に必要だったのは特別な力じゃなかった。

「……分かってたよ、フツーに高校受験なんか受けらんないだろうって」