ID:884teikiの記録

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『――被検体410番』

何か返事をすることすらもう面倒だった。

何も余計なものの入っていない空の器。
新しく詰め込むには十分なのだと。
眼の前の白衣の大人は笑っている。

母の軽い拍手。
姉のじっとりとした視線。

どうでもいい、あたしがこの世に棄てて行く物。

ただの無能力者。
ただの実験動物。
ただの入れ物。
ただの。

あたしは。

きっと失敗作で終わる。




「……これも実験なワケ? それとも走馬灯……? こんなアニメ観たことあったっけ……」



水槽の外、扉の向こう、迷路のゴール。
穴ぐらの先、明るい場所。

どうでもよくない、あたしの大切な三年間。