ID:884teikiの記録

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元の世界の人間との間に良い記憶なんてほぼ無いし、当然先生という生き物に対してもそうだった。

クラスの陽キャにあたしを構ってやるよう頼んだり。
なんにも話を聞かないで怒鳴って、ストレスのはけ口にしたり。
いい成績を出しても、悪いところを探すのに集中したり。

だから。

皆仲良く。
皆一緒に。
皆楽しく。

学校で掲げられがちなそんなものに反吐が出るとか、あたしは考えてたし。
グレムリンに乗るのは楽しくても、明るい側の先生がわりと多いのはキツかったから。
ネツキ先生がうちの寮長で良かったってのは、ずっとあたしにも否定出来ないと思う。入学してから今まで、ずっと。

喧嘩は咎めるけど、無理に仲良くさせないし。
深夜に皆で読書会とかやってた時、多分わかってて見逃してくれてたし。
あたしが……ちょっと。ちょっと寮の奴に気まぐれで。おせっかい焼いてみたら。どこで見てたのか、後からひっそり褒めてくるし。

…………尊敬出来る大人。だったかも――いや。尊敬出来る大人、だった。

『止まってしまった知識も、技術も、心にも、意味なんてない!!』

だからこそ、その言葉は。
脳にざっくりと刺さるようで。

「……先生。先生、あたし、は……」



「…………」