ID:884teikiの記録

親愛なる狐たちへ

――通信が入る。

「……あーあー、聞こえてる? まだ回線生きてるかな……。 
 もう、周り地味にうるさ……」


「……行けそうじゃん? よし。 
 一人一人繋いで喋りかけてたら時間ヤバいじゃ〜ん? 
 だからまとめて失礼、テキトーになんかしながらでも聞いてよ。 
 聞かなくてもいーけど」




「ネツキ先生。 
 ま、いっつもサボってごめんってワケよ。 
 この学園、ゆるくて楽しくて息苦しくなくて。 
 ついつい怠惰な暮らししちゃうじゃん?」


「……先生、あたしもね。先生に褒めてもらうの、嬉しかったワケよ。 
 先生がうちの寮長で良かった」



「クラリティ。 
 見せてくれるじゃ〜ん? 年長者の威厳。 
 流石ヴィクセンの狙撃手サマってワケよ。 
 ……カッコ良かった、素直に褒めてあげる。」


「…………多分さあ、あたし。あんたみたいな奴が居たから。 
 踏み出して、皆と関われたのかな。気ぃ弱かったあんたを悪く扱う奴、居なかったからさ。 
 感謝しなきゃね、あんたにも」



「蒼。 
 あんたがああ言ってくれなきゃ、普通に帰ってつまんなく人生終えてたかもね。 
 このまま行けば、逃げ道なんか腐る程見つかりそうだけど……なんとか迷わないよう生きてくワケよ。 
 あんたから貰った言葉も思い出しながら、ね」


「……あはは、今でこんなんだとさあ、マジのジジイになった時のあんたが気になるじゃ〜ん?」



「ミシェル。 
 お互いアレが遺影になんなくて良かったワケよ。 
 あんたも大概物騒な世界に身を置いてるみたいだけどさ、これからも下手におっ死んだりしないでよ。 
 ホントーの遺影はジジイとババアになってからのやつ使えるように。頑張ろうじゃ〜ん」


「……あとさ、触れられるの嫌いだけど。 
 あんたが背中叩いてくれたの、悪くなかったワケよ。 
 …………アレのおかげで避けきれたかもね?」



「ミエラ。 
 2人からつつかれたし。あたしももうそんな卑下する気ないけどさあ、それでも。 
 あたしで優しい判定なら、あんたらは菩薩か何かかってワケ」


「……そ、あんたも十分優しいやつなワケよ。 
 あたしの話、ちゃんと聞いててくれたから。 
 あたしが教えたレシピ、忘れないでよ?」



「トライア。 
 ……あたしの姉はさあ。あたしの事、間抜けで愚かな子犬かなんかみたいに扱ってくる奴で。 
 ちょっとは正直に言ったげる。アレに比べりゃ、あんたのイジりの方がマシだった」


「……マシってだけだから、ホントーに。 
 あの事もあの事も。全部喋らず墓まで持ってってよ」



「リリアック。 
 余計なお世話焼いてくれるじゃ〜ん? 
 んな事言うならあんたも塩分濃度ヤバいラーメンやらドカ食いすんの止めろバーカ。ホントーに血管切れちゃうかもよぉ?」


「……まだ大口叩くの続けるつもりなら。腕の1本も失くすなよ。一生」




「最後に。 
 ここまであたしの事構ったんだからさ。 
 その……まあ。皆の事…………友達だって。あたしが勝手に思ってもバチは当たらないじゃ〜ん? 
 ……良いでしょ? 
 あ、先生は先生として敬ってあげるワケよ。大丈夫……」


「………………本当に。たくさんありがと、ね、みんな。 
 どうか、百年先まで元気で。 
 ――また、いつか」