ID:snmyatoの記録
邂逅
ある日。私の世界はとても狭くなった。
少し頭を動かして、ぐるりと見渡すだけで済む小さな世界。……少し、とは言うけれど。その少しすら、今の私には難しい。
沢山の機械に囲まれて。沢山の管に繋がれて。沢山のひとの力を借りて。
ようやく、私は生きることが出来る。このうちのどれかが、誰かが欠けてしまったら。私は死んでしまう。
死ぬのは怖い、と思う。……この苦しみから解放されたいとも、思う。
でも、結局 " 思う " だけだ。満足に動くことも出来ない私には、選択肢がない。
だから、望まれるままに生きるだけ。ただ、呼吸を繰り返すだけ。
足掻くことも。諦めることも。私には出来ないから――
『助けてほしい? あるいは、奪ってほしい?』
声が聞こえた。
『生きることに疲れてしまった。けど、引鉄を引く勇気がない』
男でも女でも、子供でも大人でもない、その不思議な声は。
「――キミが決められないのなら、私に任せてみるかい?」
不意に、確かな響きをもって。私の耳に届いた。
ベッドの傍らに、 " 私 " が立っていた。血のような赤い目が、私を見つめる。
「キミは解放を望んでいる。私は自由を欲している。ならば――」
点滴の繋がる手に、手が重ねられた。触れられた感触はない。
けれど、不思議と温かく感じる。その温もりに縋るよう、なけなしの力で触れない指を握り込む。
「共に旅立とう。この狭い部屋から」
繋がる手から溢れる光。夜闇を払う、黎明が広がっていく。
温かく眩しい、朝の光に包まれて。
段々と遠退いていく、意識の中で。
『ずっとずっと、大切にすると約束しよう。私の、可愛い贄』
酷く甘く、冷たい声を、聞いた。
少し頭を動かして、ぐるりと見渡すだけで済む小さな世界。……少し、とは言うけれど。その少しすら、今の私には難しい。
沢山の機械に囲まれて。沢山の管に繋がれて。沢山のひとの力を借りて。
ようやく、私は生きることが出来る。このうちのどれかが、誰かが欠けてしまったら。私は死んでしまう。
死ぬのは怖い、と思う。……この苦しみから解放されたいとも、思う。
でも、結局 " 思う " だけだ。満足に動くことも出来ない私には、選択肢がない。
だから、望まれるままに生きるだけ。ただ、呼吸を繰り返すだけ。
足掻くことも。諦めることも。私には出来ないから――
『助けてほしい? あるいは、奪ってほしい?』
声が聞こえた。
『生きることに疲れてしまった。けど、引鉄を引く勇気がない』
男でも女でも、子供でも大人でもない、その不思議な声は。
「――キミが決められないのなら、私に任せてみるかい?」
不意に、確かな響きをもって。私の耳に届いた。
ベッドの傍らに、 " 私 " が立っていた。血のような赤い目が、私を見つめる。
「キミは解放を望んでいる。私は自由を欲している。ならば――」
点滴の繋がる手に、手が重ねられた。触れられた感触はない。
けれど、不思議と温かく感じる。その温もりに縋るよう、なけなしの力で触れない指を握り込む。
「共に旅立とう。この狭い部屋から」
繋がる手から溢れる光。夜闇を払う、黎明が広がっていく。
温かく眩しい、朝の光に包まれて。
段々と遠退いていく、意識の中で。
『ずっとずっと、大切にすると約束しよう。私の、可愛い贄』
酷く甘く、冷たい声を、聞いた。