ID:snmyatoの記録

師団の魔術師たちと

「演習が……怠すぎる……」

 週に一度、昼と夜が切り替わるその前後三時間の間で行われる、騎士団と魔術師団の合同演習。
騎士団と違い、魔術師団の人数は少ない。イコールで、それだけ演習の順番が多く回ってくるということだ。

「だよなぁ……騎士団の連中相手に、俺らがついていける訳ないだろ」
「基礎体力からして違うしな。おまけに、こっちは攻撃系魔術の使用は不可ときた」
「向こうに魔術使えるやつがいないとはいえ、その条件じゃこっちが不利すぎだっつーの」
「一部の補助魔術は禁止していないのだから、それを使え。あとはタイミングと戦い方次第だ」
「多少の補助魔術でどうにかなるとでも? インドア魔術師を舐めるなよ――って、」

今この場には居なかったはずの声に返したところで、時が止まった。
一瞬の硬直から復活して、振り返る。

「「だ、団長!?」」

重なる声。そこには、フードを目深に被った師団の長が居た。

「確かにオレたちは魔術の研究やら結界の維持やらで、室内に籠りがちだ。外の見回りも、騎士団と比べれば多くはない。故に魔術が制限される状況で戦うことは少ないだろう。だが、」

淡々と語る声には、しかし。

「経験は積んでおけ。それがなければ、いざという時の選択肢かのうせいすらもなくなってしまうのだから」

どこか、優しく窘めるような――そんな響きがあった。