ID:Cyan033の記録

どうしてこんなにSSが?

デスまとめです

タバコの話

どこか、いつもの廃ビルへの帰り道。

Good Luck!良い死に方を!』と書かれたタバコ一本と、ライターを睨んで。
「……これはダメ」

お呪いは胸ポケットに仕舞う。なんだか、吸ったらもったいない気がして。

代わりにそこら辺で買ったタバコの箱から一本取り出す。
そのままいつも隣で見ていたように、深く吸ってみて。

「ごほっ、げほ、けほ……」

咽せた。わかっていたことだった。

「……やっぱり、上手く吸えないし、よく……わかんない」
「これの何が良くて吸ってるんだろ、あいつも、あの人も……」

手に持ったままのタバコが煙を燻らせる。

ずっと子供のまま。背伸びして追っていた背中は、みんな大人で。
あの人たちを、あの大人たちを未だよくわかっていない。

「……いつか俺にもわかるのかなぁ」

その日は、きっと来ない。もう大人にはなれないから。



(IF)骨壷の話

「貴方の言う酔生夢死、鷹匠無為ならこちらにいますよ」

そう言って案内人は鳥居を抜けた先へ、
社務所と呼ばれた場所の奥まで。

「"これ"が鷹匠無為です。」

扉を開けた先。棚の上、萎びた白菊の横。袋に書かれているのは、「鷹匠無為」。

「祀られているモノがここに置けと煩かったもので。」
「本来なら墓に入れるつもりだったんですが、しょうがなくここに。」

それを眺める貴方に、案内人は告げる。

「これで満足でしょうか。」


あとがき 形代さんって便利



雪の話

ちょっとした、幼少期の話。

「……雪だ!」

8歳くらいの時の冬。家の庭に雪が積もった時があった。

「つもってる……!」

外に出て手袋もしないまま、白い雪を手の中に集めて、握って。
ただただ弟に見せたい一心で家のある場所まで駆け込んだ。

「うい!見て見て、雪つもってたよ!」

格子のついた扉越し。
有為は俺の方を向いて近寄ってくる。

「ゆき?」

「へへ、持ってきたの!」

その隙間に手を出して。
開けば、滴る水と赤くなった手のひら。

「……あ」
「ご、ごめん、とけちゃった……」

ぽたぽたと、床に落ちる雪解け水。
有為はそれをじっと見ていた。
あの時の自分は、それがてっきり見られなかったのが悲しいのかと思って。

「……も、もういっかい!もういっかい、持ってくる!だから……」

「ううん」
「うれしいから、いいよ」

顔を上げれば、いつも見せる笑顔で。

「……いいの?」

強がってないかな、なんてと勘ぐって聞き返した。

「いーの!」
「でも、いつか、いっしょに見よ!」

「……うん!」

そう有為に応えたくて。
きっと、きっといつか一緒に見ようと。

「ゆび切りげんまんだからね」

冷たい小指を絡ませた。



お菓子の話

帰る前に、同盟のみんなになんか残していきたい!
と、いうことで。今まで集めたクレジットなどの通貨を掻き集め、下層で買い物でもしようかとしたところ。

「食べ物なら当たり障りないかなあ、って思ったけど」
「……みんな、何が好きなのか知らない……」

そう。自分はあまりにも同盟のみんなのことを知らない。
あんまり個人の事情に深入りしない方が良いと勝手に思っていたのもあるけど。
それでも、好きな食べ物ですら知らないのだ。

「お菓子ならみんな食べるかなぁ、日持ちも良いし……」

菓子折のような、上等なものではないけど。
紙袋に、ちょっとしたパーティーが開けるくらいのお菓子を詰めて。

「みんなで食べてね~……っと」

そう、袋に書き残して。
いつか、みんなで一緒に集まって、喋りながらお菓子を食べたり……

「……できたら、いいなあ」

結局、叶わなかったのだけど。



(IF)スワンプマンの話


前置き
このSSはメトコリ1期本稼働においてID:32 V=ドランクさんが建てたルーム「スワンプマンの巣窟」の設定を使っています!ありがとう!
あとID:39 ジャンク屋さんが出ます ありがとう!

本編


再びエテメンアンキに来て、迷い込んだ路地。

「これは……」

戻ろうと、背を向けようとはしなかった。
勘が正しければ、ここにはスワンプマンがいる。

そのすぐ。奥の影から現れた姿。

「やっほぉ、ジャンク屋さん」
「"また"、会えたね」

笑顔を向けて、手を振る姿。
あの時助けられなかった、酔生夢死そのもの。

「……夢死さんではないでしょう、貴方。」

分かっていた。これは二回目だから。

あの時と全て同じ。
ケースを担いでいるのも、買っていったナイフをベルトにつけているのも、笑みを向けるのも。
それでも、あれは偽物だと言い聞かせる。

「当たり。俺から話したんだもんねぇ。スワンプマンの話。」
「でも、本物ならどれだけ良かったかって思ってたでしょ?」

「そりゃあ、思いましたけどね」
「……また、と言った割には二度と会えないような口振りをしてましたし」

「……あぁ、それもバレてたんだ」

「逆にバレてないと思ってたんですか」

そんな風に、本物にも言ったように同じように軽口をたたいて。

「じゃあさ、どうして助けてくれなかったの?」
「全部、わかってたのに」

返ってきたのは、後悔を抉る言葉。

「っそれは、」

偽物は言葉を被せる。

「お呪いなんかじゃ、どうにもならないってことはわかってたでしょ」
「本当に、手の取り方がわからなかったの?」
「俺を見捨てたの?匙を投げたの?」

「……夢死さん」

「いいよいいよ。全部、俺が悪いんだからさ。」

また言葉を被せ、笑みを向ける。わかっていながら言っている。
言葉も表情も、悪意によるもの。

「……全然、似てませんね」
「真似するの止めたんですか?」

今度は皮肉を。ただ、本物はこうはしないと否定したかったのかもしれない。

「君も、俺を理解してくれないんだ」
「これが俺だよ。見てない部分を見ただけで信じないのは良くないよ」
「君が優しさに甘えてただけだ」

出てきた答えは。それを証明する手段もないから。

「いいえ」
「そんなこと言いませんよ、夢死さんは」

噓だと。目の前で喋る偽物の言うことは、全て出まかせだと。
自分に言い聞かせながら、煙草に火をつける。

「……そう。じゃあ俺は偽物だ。」

そこまで言って、今まで向けてた笑みをすとんと落として。

偽物は路地の片隅に落ちた短刀を拾い上げる。
それを止めなかったのは、何か期待したからか、どうだったか。

「偽物は殺さないと。そう言ったのも俺だったよね。」

結局その切っ先を、貴方に向けて。

「ねえ、試してみない?」
「あの時言ったこと。本当に俺が、君に敵わないか」

「……自信が無いとか言ってませんでした?」

「それは本物の言ったことでしょ」

煙と共に溜息が吐かれる。
「偽物とはいえ、夢死さんと殴り合うのはさほど気が進まないんですけど」
「いいですよ」

吸っていた煙草を、踏みにじって。
こちらも左手を向ける。

「喧嘩、いえ――」
「一方的な、蹂躙を」